「事実をきちんと伝える」。それは簡単なようで難しい。しかしできるかできないかで、地域の売上にも影響する。今日はとある温泉地でのエピソードをご紹介します。
聞かれていないその先をイメージできるか?
先日、東北のとある温泉地に泊まった。最寄り駅まで車で約10分。10:10の列車に乗ろうと決め、駅前で少し買い物でもしようと、ホテルに「9:40にタクシーを呼んでおいてください」とお願いした。
9:35にフロントへ行き、2分程で精算をすませる。さあタクシーに乗ろうと思ったら、フロントの方が精算後にタクシー会社に電話した。そして「10分ほどで参ります」と私に告げた。
「あれ?」と思ったが 、まあ、お土産を買わなければ電車には間に合うので「わかりました」と返答。
怒ってはいない。大したことではない。ただ、このちょっとした配慮不足により、微々たるものかもしれないが地域に落ちるお金が減ったということは認識した方がいい。
本題はここからだ。
フロントの方が話を続ける。「この地域はタクシーの台数が少ないので事前予約はできないのです。乗る直前に電話して、空車があればすぐ来てくれるんです」と。
待て待て。そうなると話は違ってくる。
では、もし先ほど電話した時に空車がなかったら、私は10:10の電車に乗れないことになる。
やんわりその旨伝えると「あ、電車は11:00にもあります」と答えた。
そういう話ではないのだ。
私は昼までに仙台に到着する必要がある。そこへの配慮が全くない。というか、気付いていてない。考えていないのだ。
さらに話は続く。
タクシーを待っていると、フロントでのやり取りを聞いていた女性客が声をかけてくれた。
女性:「お兄さん、どこまで行くの?」
私:「最寄りの◯◯駅です」
女性:「この後ホテルの送迎バスが出るから、それに乗って、◯◯駅で降ろしてくれるようにお願いしたら?多分大丈夫だと思うよ」。
私:「そのバスはどこまで行くのですか?」
女性:「仙台駅よ」
しかもそのバスは電車より30早く仙台駅に到着し、無料だ。結局タクシーをキャンセルしてもらい、私は送迎バスで仙台に向かった。
ポイントは2つ。
この街の「タクシー会社が原則、事前予約を受付ない」という事実に対して、私は何ひとつ文句はない。そういう事情だと受け入れるだけの話だ。
しかしその”事実”を、「タクシーを呼んでください」とお願いした時点で、フロントは私に伝えてもいいはずだ。
分かっていれば、私は時間に余裕を持って9:00頃に出発を予定しただろう。結果、お土産屋での滞在時間が長くなるので、予定より多く買い物をしたかもしれない。
そして「タクシーを呼んでください」とお願いした時点で一言「どちらまでお出かけですか?」と尋ねてもいいと思う。
「最寄り駅です」と答えたのだから、電車に乗ることは明確だ。
「最寄り駅からどちらにお出かけですか?」
「仙台です」
「では送迎バスがございまして、空席がございますが、いかがですか?」
これだけの話だ。「タクシーの事前予約は難しい」「送迎バスがある」と言う事実。これをそのまま伝える。
言われてみれば当たり前。しかしそれを実践し続けるのは大変なのかもしれない。このスタッフの方が、たまたまこのように接客してしまっただけかもしれない。
しかし旅は一期一会。人との出会いこそが旅の感動だ。接客に携わる方はこういった事をマニュアルとして暗記するのではなく、自然と滲み出るように身に付けることが大切だ。
事実の先を、さらに深く考える
敬愛するホテルコンシェルジュ阿部佳さんのエピソードをご紹介しよう。
「相撲を見たい」という相談に対し、どうしてもチケットが入手できない。その時「チケットが手に入らない」ではダメで、対案を出すことが大切。
さてその時、どのような対案を出すか。
「歌舞伎」と考える人が多いようだ。しかし、なぜ相撲の対案が歌舞伎になるのか?お客様が求めているのが「日本の伝統」ならば、歌舞伎もあり得る。
しかしお客様が求めるのが「スポーツ観戦」ならば、東京ドーム巨人戦が対案になるかもしれない。その判断を勝手にしないこと。お客様と確認をとること。
仙台に向かうバスの中でこの阿部さんのお話を思い出した。
「自分はきちんとできているだろうか?」。そんな事を自問自答するいい機会になった今回のエピソード。学びも自分の気付き次第。あなたはどうですか?
今日も「本質を捉えて」行こう!