展望台から何を見せたいのか?「意味」と「価値」が伝わらなければ魅力半減!

「天守移動~今年の桜はひと味違う~」というサブタイトルで開催された今年の弘前さくらまつり。さくらは勿論、曳屋後の天守も見所のひとつでしたが、その意味と価値は訪れた観光客に伝わっていたのでしょうか?今日はそんなお話です。

天守移動後初のさくらまつり


昨年秋に曳屋が行われ、天守は本来の石垣の上から、本丸中央付近の芝生に移動されました。

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こちらが本来の状況。

 

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こちらが天守移動後の状況。

石垣が膨らんできていて、崩落の可能性がある為天守を曳屋して移動し、これから長い年月をかけて石垣の修復工事を行うのです。

普通に考えれば「公共工事」なのですが、弘前市はこの曳屋を「観光イベントにしてしまおう!」と打ち出し、話題になりましたね。

 

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これぞまさに曳屋。たかまるくんも工事仕様です。笑

天守が移動する全行程を、タイムラプスで見ることができます。興味のあるかたはぜひこちらをご覧ください(弘前市のHPです)。

 

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そして今年の「弘前さくらまつり」のポスター。斬新!こうして「石垣の上に天守がない」、初めてのさくらまつりが開催されました。

展望台から見える風景とは?


天守移動後、本丸には展望台が設置されました。

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こちらがその展望台。旗の模様は津軽家の家紋「津軽牡丹」です。

 

展望台に上るとどのような景色が見えるかというと、

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こんな感じ。これを見た観光客はどのように思うでしょうか?

「天守、結構小さいんだね」
ほとんどの第一声はこれでした。確かに全国の天守に比べたら小ぶりです。

「これだと展望台上らなくても対して変わりなくない?」
そんなに高さのある展望台ではないですからね。

まつり期間中、展望台には行列ができていました。無料ですし、何となく上らないといけない気がして上ってみたら、「ふーん」「で、これって何?」と思った観光客もいたと思います。

「なぜ」こうなるのでしょうか?
「何のため」にこの展望台はあるのでしょうか?
「何」を見せたい展望台なのでしょうか?

「今だけ、ここだけ、あなただけ」


ではこちらの写真はどうでしょう?

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天守の後ろには岩木山!そして桜!「お城と桜と岩木山」という風景!!

この「お城と桜と岩木山」という構図は、曳屋している今しか見れない風景。石垣の上にお城があった状態では、人の目線はお城より下にある為、岩木山と一緒に眺める事はできませんでした。

正に「今だけ、ここだけ、あなただけ」な風景。

お城単体ではなく、この風景を楽しんでもらいたい、というのがこの展望台だと思うんです。

さらに重要なのは「弘前市民の岩木山とお城に対する想い」。岩木山が綺麗に見える日の弘前市民のFacebookやTwitterは「岩木山キレイ!」「岩木山最高!」「今日の岩木山感動した!」などのコメントと写真で埋め尽くされます。

その市民性は地元「弘前経済新聞」で記事になるほど。こちらは昨年9月の様子。


弘前市民は岩木山が大好き!

弘前公園とお城も大好き!!
もちろん桜大好き!!!

そんな「今しか見れない、弘前市民の”大好き”がコラボした特別な風景」を満喫できるのがこの展望台なんです!

・・・というのが観光客に伝わっていません。

弘前市民にとって大切な「お城と桜と岩木山」という宝物を、観光客のみなさんにも楽しんでもらいたい。弘前を好きになってもらいたい。そしてまた遊びに来て欲しい。

そんな「意味」「価値」「物語」「想い」を伝えることができるのがこの展望台。きちんと伝わればね。

意味と価値が伝わって、人は感動する


岩木山はいつもきれいに見えるとは限りません。お天気だからしょうがない。

13162553_10204949354852587_813467351_n先ほどの写真、うっすらと岩木山が見えていますが、まったく見えない時もある。

 

そして天気がいいとき。

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天気がいいと岩木山が綺麗にみえる。

「お城と桜と岩木山」が一緒に見れるのは今だけ、この展望台からだけ。だから価値があるし、並んででも上がる意味がある。

「岩木山が見えない日に来た観光客はどう思うのか」。それを少しだけ考えてあげると「おもてなし」になります。

例えば、毎年まつり後半になって桜が散り始めると、公園内には「満開の桜」の写真パネルが掲示されます。せっかく来てくれた観光客に「本当はこんなにきれいなんですよ」と伝える為でしょう。

同じ事をすればいいのにね。あんなに大きくなくてもいいから。又は一言「お天気が良い日は、お城と桜と岩木山という絶景が楽しめます」というプレートでもいい。

さらに、「弘前市民にとってお城と桜と岩木山」とはどのような存在か。ほんの一言でいいから、展望台入口付近にでも掲示しておく。

へー、弘前市民にとってそんなに特別な風景なんだ」と理解してから見るのと、そうじゃないのでは、まったく印象が違います。

こういった意味や物語が伝わらないと、特に天気が良くない日の観光客には「弘前城、普通」「まあ、ぼちぼち綺麗ね」「思ったよりお城小さいのね」で終わってしまう。もったいない。

ちなみにお城も、元々は5層の天守があった本丸内の別の場所にあったワケです。それが燃えてしまい、元々櫓があった現在の石垣の上に新たに作られたのが今の天守。

なぜ燃えたのか?
なぜ新しい天守は5層より低い3層になったのか?

こんな話を理解した上で展望台から眺めると「なるほどねー」「だから天守ちいさいんだ」となる。

意味と価値が伝わり、共感性が高まると人は感動する。これ、本質。でも地元人が一番そこを忘れがち。地元人には「岩木山・お城・桜」は日常だから。

地元の人間の「日常」は観光客の「異日常」。日々の日常にアンテナを張っていく。それが着地型観光の基本

今日も「意味と価値を伝えて」行こう!

 

#弘前さくらまつり #花筏  #曳屋  #西谷雷佐  #たびすけ

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投稿者: 西谷 雷佐

青森県弘前市出身。 東奥義塾高等学校を卒業後、ミネソタ州立大学マンケイト校で産業心理学とスピーチコミュニケーションを学ぶ。 たびすけ合同会社西谷代表を務める傍ら、路地裏探偵団の団員としても活動中。 まち歩きや地域の魅力発信から婚活まで講演活動多数。