修学旅行の「学」とは何か?関東から修学旅行を弘前に誘致する戦略とは?

関東の高等学校修学旅行を弘前に誘致しようというプロジェクトが始動しました。現在ほとんどの高校が九州や沖縄に向かう中、弘前に誘致するその戦略とは?今日はそんなお話しです。

 修学旅行の「学」とは何か?


そもそも修学旅行とは何でしょう?

修学旅行(しゅうがくりょこう)は、主に日本において小学校、中学校、高等学校の教育や学校行事の一環として、教職員の引率により児童・生徒が団体行動で宿泊を伴う見学・研修のための旅行。特に「宿泊を伴うこと」「行き先がある程度遠隔地であること」で遠足や社会見学とは区別され、「宿泊施設が野営地ではないこと」で野外活動と区別される。<ウィキペディアより>

 

出発前に事前学習をしたり、現地で自主見学をしたり、学びの要素は見えつつも、現在の修学旅行のほとんどは実質「観光旅行」です。

「行った事のない場所に行くこと自体が新たな学び」と言えなくもないでしょうが、学校行事として旅に出るワケですから、本当はもっと「学」の要素を取り入れたい。しかしそのやり方がうまく見いだせない。

そして「今まで修学旅行はずっと沖縄に行っているから、これからも沖縄にしよう」という流れになる。先生方も忙しいので、新しいことに取り組むのも大変です。 ※沖縄がダメという意味ではないですよ!

 

修学旅行の「費用」は?


関東地区高等学校の修学旅行の旅費はほぼ3泊4日。行先にもよりますがその費用は8万~10万とのこと。まあ、海外に行く学校もあるでしょうけど、だいたいこのくらい。

仮に旅費が10万だとして、もし沖縄に行くと、往復の航空運賃だけで7万円近くします(時期によります)。数百人が「特割」を使う事はできないので、団体割引になるからです。

すると現地で使えるお金(宿泊・食事・貸切バス・体験等)は約3万円しかない。ゆえに予算節約の為「自主見学中昼食は各自」とかになる。

しかし北海道新幹線に乗って函館に行くとしましょう。すると新幹線代金は往復で4万円弱(時期によります)。現地で使えるお金が約6万円と倍になります。

この北海道新幹線開業を機に「函館に行く」という修学旅行を提案しよう。しかし「3泊すべて函館ではなく、途中の青森で1日過ごしてもらおう!」。

なぜならりんご畑にはアクティブラーニングのフィールドが広がっているからです!

アクティブラーニングとは?


アクティブラーニングとは何でしょう?

教員からの一方向的な講義で知識を覚えるのではなく、生徒たちが主体的に参加、仲間と深く考えながら課題を解決する力を養うのが目的。そうした力を養う授業手法として、議論やグループワークなどが挙げられることが多い。 <コトバンクより>

 

ポイントは「主体的」「課題を解決する力」。最近の高等学校は受験対策の授業だけではなく、こういった人材育成に取り組んでいますが、なかなかいつもの教室だけでは効果が薄い。

そこで修学旅行という、ある意味「非日常の旅の中」で、この「主体性」や「課題を解決する力」についてフィールドワークしてもらおう!というのが目的です。

又、大学でも「アクティブラーニング」「課題解決型学習」等は積極的に取り入れられています。

つまり「大学入試に役に立つ学びがある修学旅行」という要素もあるのです。

学びのフィールドは青森のりんご。

青森と言えば「りんご」。ただ収穫して楽しい!だけではなく、りんごを通して見えてくる地域の課題を、りんご農家さんや弘前の大学生と一緒にフィールドワークします。

自主見学はなし。朝から晩まで地域の人と「交流」しながら過ごします。夜はホテルに戻り、グループディスカッションをして発表会を行う。インプットとアウトプットを旅の中で実施するのです。

りんご作りの大変さや後継者不足問題。誰もが食べたことのあるりんごの先に見える社会問題・経済問題・産業問題・国際問題・将来の日本。

りんごを通して「答えのない問い」を生徒たちに投げかけ、地域の人たちと一緒に考える修学旅行です。

「りんご収穫して楽しかった」「りんごおいしかった」という思い出だけではない旅。

例えば関東に戻ってから、テレビで「青森に台風直撃」というニュースを見た時、「あの時のりんごの木、折れたりしてないかな」「あの時あった農家の高橋さん、大丈夫かな」という感性を育む旅。

例えば関東に戻ってから、スーパー青森県産りんごをさがしたり、ニュースで青森の事が妙に気になったり。

仲間との楽しい思い出はもちろん、将来の自分や日本について思いを巡らすきっかけとなる、そんな修学旅行。そのタイトルは、、、

「りんごの先に見えるローカルとグローバル」

 

弘前大学・弘前のりんご農家さん・弘前市・たびすけ・JTBが総力を結集してプロデュースします!

これは究極の「着地型観光」なんです。ある意味どの地域でもできるのかもしれない。素材はたぶんどこにでもある。あとは「やるかやらないか」「地域をどのように編むか」「どんな物語にするのか」。

さあ、盛り上げていくぞー!!

 

「社会との接点としての教育旅行」


先日、「生徒と社会を結ぶ教育旅行の可能性を考える」という勉強会を開催し、たくさんの関東エリアの高校の先生方にお集まりいただきました。

発表したの青森・石巻・舞鶴・京都・長崎・沖縄の6つのエリアから8つのコンテンツ。すべて「アクティブラーニング」「課題解決」「生徒の主体性を引き出す」「地域と交流する」というコンセプトの修学旅行プログラムです!
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どれも素敵なタイトル!

 

この日は青森のコンテンツ代表として私と、長崎のコンテンツを代表して長崎大学経済学部副学長の西村宣彦氏の対談形式で発表会とセミナーを実施しました。
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アクティブラーニングが土台にあるセミナーですから、参加者にもどんどん発言して頂こうと「フィッシュボールスタイル」で実施。
12910364_10204727267540543_1586154434_n私と西村先生が中央に座り、空席が2つ。意見のある方は発表する時だけ前に出てきて空席に座って意見交換します。

このスタイルは初めてでしたが、その場に立って話すより一体感・自分事感が高まり、とても楽しかったです。

先生方からどんどん意見や感想が飛び出します。その意見に対して私と西村先生がさらにアイディアを膨らます。

それをその場でマインドマップに落とし込んでいく!
12900146_10204727267380539_1317377379_n実践してくれたのは、長崎大学の堤さん。これぞまさにアクティブラーニング!学生による主体的な授業運営に力を入れている西村ゼミの真骨頂を目の前で拝見でき、とても刺激になりました。

今までの修学旅行は、一度行き先を決めるとしばらく変更しない雰囲気があります。その大きな理由のひとつは「変える事の大変さ」でしょう。

保護者へ「なぜ行き先を変えるのか」の説明。そして勿論、学内でその案件を通していかなければいけない。大変な労力です。

しかし言い換えれば、その先生の御苦労をフォローできないものでしょうか。職員会議に同席する。保護者説明会で説明する。生徒さんへの事前指導も(ある程度)代行する。

その上で、3年~5年に1度、修学旅行の行き先を見直す。行き先が変わっても、そこには「アクティブラーニング」「課題解決」「生徒の主体性を引き出す」「地域と交流する」というコンセプトは普遍的な土台として存在する。

既得権益の時代じゃないです。変化を恐れたり、面倒くさがったりする時代じゃないです。今回の本質は「生徒にとって学びのある旅」かどうか。

こんなありそうでなかった新しいスタイルの修学旅行を、チーム一丸となって日本に提案していきます。まずは関東エリアから。

 

今日も「本質を見極めて」行こう!

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投稿者: 西谷 雷佐

青森県弘前市出身。 東奥義塾高等学校を卒業後、ミネソタ州立大学マンケイト校で産業心理学とスピーチコミュニケーションを学ぶ。 たびすけ合同会社西谷代表を務める傍ら、路地裏探偵団の団員としても活動中。 まち歩きや地域の魅力発信から婚活まで講演活動多数。