上田城に行ってきました。大河ドラマ放送中という事もあり、平日なのにたくさんの観光客!現地では迷わず「無料観光ガイド」に参加。上田城という場所を、どのような視点と言葉で案内するか。それはそのまま観光客の印象になる。今日はそんなお話です。
観光ガイドツアーに参加!
上田城に到着すると、すぐ目に飛び込んできたこちらの看板。
地元の事は、地元の人から聴くのが一番!ということでガイドツアーに参加。
約30分で本丸付近を巡り、上田家・上田城の歴史についてご案内頂きました。
・真田昌幸の息子が真田信繁。
・真田家の家紋は六文銭。
・城の向こうに見える山を、当時の真田家もここから見ていた。
・この場所に天守があった(現在、天守はない)。
・・・う、うん。そうですね。
もちろんこれだけではなく、いろいろお話しして頂いたのですが、どうもさっぱりしない。なぜか。
「事実」しか説明していないからです。
と言う事で、どうしたかと言うと・・・
観光ガイドツアーに参加!その2
次のガイドツアーにも参加してみました。
すると、ほぼ先ほどのガイドさんと同じ事を話すのですが、、、
・真田昌幸の息子が真田信繁。
「大河ドラマで言うと、”草刈正雄の息子が堺雅人”って事です」
・真田家の家紋は六文銭。
「三途の川の渡り賃が六文。つまり、死を恐れないという意味。ちなみに六文は今で言うと約180円です」
・城の向こうに見える山を、当時の真田家もここから見ていた。
「城の向こうに見える山は美ヶ原。大河ドラマオープニングの雲海はここで撮影されました」
・この場所に天守があった(現在、天守はない)。
「この場所に天守があったと言われています。規模等は今でも不明です。ではなぜ天守があったと断定できたかと言うと「金箔瓦」が見つかったんです。当時、金箔瓦はお城等にしか使われていなかったんです」
わかりやすい!伝わってくる!!
さらに、
門の上にある柱について説明している様子です。柱の意味や装飾について、そして復元した時にこんな立派な一本物のヒノキが日本になかったので、実は台湾製だという話も。
観光客の視点を立体的にさせてくれる!
すばらしい案内でした。じゃないとなかなか見上げて歩かないですよ。
もうひとつ「立体的な視点」の案内がこちら。
今度は「見下ろす」視点での案内。こちらの石垣、堀からお城に向けて草が茂っています。一般的に石垣は「石だけ」でできていますよね。
石垣にあえて粘土を混ぜて草を植えた。敵が攻めてきた時に滑り落ちるように。
言われると「なるほど!」と思いますが、そもそも見下ろさないかもしれないし、見下ろしたとしても「石垣に草生えてる」と気付かないかもしれない。
なぜこちらのガイドさんの話がわかりやすいのか。
事実だけではなく「理由」も伝えているからです。
さらに視点を二次元から三次元に立体的に導いてくれる。そして現在放送中の大河ドラマとうまく連動させて、共感性とわかりやすさを高めている。とても勉強になりました。
大満足した所で、どうしたかと言うと・・・
観光ガイドツアーに参加!その3
他のガイドさんはどうなんだろう?という好奇心が止まりません。笑
そしたら新たな情報が!こちらの天守に通じる門、左右の石垣の出っ張り具合が違うんです。右の方が厚みがあって、左の方が薄い。
言われてみると、門に向かって真っすぐな道。弘前城などは、道に対して門は鋭角に設置され、敵を減速させるように作られているのに。
これだと、敵が攻めてきたら減速せずに突進できてしまいます。しかし、離れた場所から見ると、左右の厚みの違いは気づきにくいですよね?
敵が「しめしめ、スピード落とさず突進できるぜ!」と思って門に突っ込むと、
先ほどの出っ張った側の石垣の上には矢を放つ穴があり「減速させずに隙をついて敵を倒す!」という仕組みだそうです。なるほどねー。
さらに、
敷地内にある上田神社。すでに登場したふたりのガイドさんも神社の説明はしていたのですが、今回のガイドさんが注目したのはこの「必勝合格祈願」ののぼり。
なぜ「合格祈願」の神社なのか。
それは、上田城は絶対不利と言われた戦に2度勝利した城。つまり「絶対落ちない城」。落ちない=試験に落ちない。だから合格祈願で訪れる人が多いとのこと。
これはガイドさんが紹介してくれた自由帳。「売店で売っている」と教えてもらったので立ち寄りましたが、この話を聴かなかったら僕は売店には寄らなかったです。
とまあ、今回3人のガイドさんの案内を体験させて頂きました。基本情報は押さえつつも、3人ともまったく違って面白かったです。
「マニュアル化」よりも「ブランド化」
僕はこの日時間があったので3人のガイドさんを体験し、上田城について色んな事を知ることができましたが、普通は1回しか参加しないですよね。
1番目のガイドさんの話しか聴いてない観光客は「ふーん、まあ、上田城ってこんなもんか」と思ったかもしれません(偉そうな事言ってごめんなさい)。
でも、2番目、3番目のガイドさんと一緒に歩いた観光客は、きっと予想以上に楽しかったハズです。
無料であれ、ボランティアであれ、ガイドとしてお客様を案内する以上、きちんとクオリティコントロールが必要です。
その一般的な例が「マニュアル」を作ることでしょう。
「真田昌幸の息子が真田信繁」「真田家の家紋は六文銭」など、必ず説明する項目の原稿をきちんと覚える。それも確かに大切。
しかしもっと大切なのは「お客様に喜んでもらう=どうしたら喜んでもらえるか」を常に考えること。
上田を好きになってもらいたい。
また上田に遊びに来てもらいたい。
大河ドラマを見てもらいたい。
その為に、どのような内容を、どのような順番で、どのような言葉で伝えるか。
私の名前は、西谷雷佐です。
俺の名前は、西谷雷佐です。
ぼくちゃんの名前は、西谷雷佐です。
同じ意味でも、伝わり方がまったく違いますよね?
弘前城は、総面積49万2000平方メートルです。
弘前城は、約14万9000坪です。
弘前城は、東京ドーム約10個分の広さです。
同じ意味でも、わかりやすさがまったく違いますよね?
こういった事を常に考える。常に進化させていく。それがそのままガイドの個性となり、地域のブランドになります。
ガイドの印象が、その街の印象。
タクシー運転手さんの印象が、その街の印象。
ホテルフロントの印象が、その街の印象。
そんなことを、みんながほんの少し考えると、観光客が楽しめる街になる。「自分は関係ない」ではなく、全員がほんの少しそういう気持ちを持つ。自分自身が地域そのものだから。シビックプライドってヤツです。
今日も「言葉の伝わり方」を意識して行こう!