青森県と聴いて「刀剣」をイメージしますか?一般的な青森のイメージは「りんご」「ねぶた」「桜」等かもしれません。しかし先日「青森=刀剣」という文脈でツアーを企画し、全国から定員を超える申込みがありました。なぜ刀剣なのか?どのように参加者は集まったのか?今日は刀剣ツアーの様子をご紹介します。
刀匠と語り、剣術を体験するツアー
青森県田舎館村。この村には45年にわたり刀を作り続けている青森県を代表する刀匠のひとり「中畑國廣」氏がいます。
刀鍛冶として作刀するだけではなく、柄やつば、鞘に至るまでできる限り自身で制作している国内でも数少ない刀匠です。
田舎館村の隣に位置する青森県弘前市。今から約440年前の戦国期を生きた剣聖「塚原卜傳」が開いた剣術「卜傳流」。
それが弘前藩に伝わり多くの武士たちが習得。現在は弘前市だけに残り、その技には乱世と長い歴史を潜り抜けてきた心身の知恵が息づいている。
いかがですか?ぐっときませんか??
世の中の全ての人にはぐっと来ないでしょう。しかしある一定の方々にとってはもうたまらない内容なのです。
それは、、、
「刀剣女子」の皆さんです!
企画当初からターゲットは「刀剣女子のみなさん」と決めていました。しかし男性で刀剣に興味のある方もいるだろうから、「女子限定」にはしませんでした。
しかし、、、
結果的に参加者は全員女性でした!!
刀剣女子、情熱がハンパないです。
いずれにせよ「ターゲットを明確にする」のは大切だと思います。
ツアー初日は刀匠とトコトン語る!
いよいよツアー当日。弘前駅城東口に参加者が続々と集合!
バスに乗ったら中畑さんの工房に直行!
普段から見学は受け入れていますが、通常滞在時間は30~40分くらい。
しかし今回の滞在時間は3時間!!
とことん中畑さんの刀剣を満喫して頂く内容です。
刀を作っていく過程をひとつひとつ丁寧に解説して頂きました。
実際に触れることもできます。この状態の刀は男の私でも両手で持ちあがらないくらい重い(本当に)。それを中畑さんは片手で操るというから驚きです!
次に真剣を手に取って鑑賞します。
中畑さんの指導のもと、鑑賞の作法や楽しみ方を学びます。
刀剣を心から愛する参加者のみなさん。会場内に情熱がほとばしります。みなさん熱心にメモを取ったり写真撮影したりしていました。ホント嬉しくなります。
そして次は時代劇でよくみる「あの作業」を体験です!
刀ポンポン!!
こういう道具を使います。
この赤いボンボンが、思っているより堅いんですね。そして音も「ポンポン」というよりは「ガンガン」という作業音。想像と違います。やってみないとわからないものですね。
ここで休憩タイム。ご当地田舎館村の名産「お米(紫米)」を使ったおはぎと、お米のお茶「米ティー(マイティー)」をご準備しました。
田舎館村は「田んぼアート」や、今年から始まった「冬の田んぼアート」でご存じの方も多いのでは??
中畑さんも参加者と一緒にティータイム。この米ティーが参加者に大好評でした。
休憩の後はいよいよ「刀を打っている所」の見学です!
ん??
兜かぶって楯持ってる!!!ww
使い方はこうです。
びっくりするくらい火の粉が飛びます。
しかも打つのは奥様!!
阿吽の呼吸!!
大迫力です!!
楯がなかったら服に穴があいていたかもしれません。この兜と楯を作ってくれたのは田舎館村役場の職員のみなさん。こういう「心配り」と「遊び心」、最高です!
こういうちょっとした事が、旅を盛り上げてくれますよね(お前をKILLツアーで言うと、部屋に「人間失格」が置いてある、みたいな)。
最後に記念写真を撮って、初日終了。
ええ、これで初日終了です。「弘前観光」とかなしです。だって「刀剣ツアー」ですもの。刀剣だけをじっくり堪能してもらえればいいのです。
ちなみに夜はオフ会があったそうで、ツアー参加者以外の刀剣ファンも集まり、大いに盛り上がったそうですよ。
ツアー2日目は卜傳流体験!
会場到着後、まずは袴に着替えます。袴じゃないと刀を腰に差せませんからね。
そして剣術や作法をみっちり学びます。
一通りの業と作法を身に着けたら、弘前城に「登城」です!
弘前城の歴史や、それにまつわる卜傳流のお話しを聴きながら本丸を目指します。
要所要所で剣術についても触れます。例えばこの「東内門」には、侵入者に対して矢を放つ穴が開いています(写真の三角と四角の穴)。この門を矢を交わしながら通過するにはどうすればいいのか。
刀を体の正面に構え、刀より矢が「右に来るか、左に来るか」を判断し、叩き落とすそうです。
安心してください。この日、矢は放たれませんでしたよ。笑
下乗橋を渡り、弘前城前で記念撮影!
復路は様々なトラップが参加者に襲い掛かります。まずは「向こうから武士が歩いてきた時の対処方法」の実践。
まず、お互いに刀を抜いた距離を保ちます。なので結構離れています。そして会釈する時も笠越しに相手から目をそらさない。そらすと切られる可能性があるからです。
この時、お互いに「右側」を歩く事が大切。左側を歩いて、万一刀の鞘がぶつかろうものなら、切られても文句が言えません。
なんて事を学び、体験するツアーです。ぐっときませんか??w
早速参加者も実践!
次に、来る時も通った東内門を通ります。すると、物陰に隠れて参加者を襲おうとしている武士と忍者が!!!
危ない!参加者が危ない!!
き、切られる!!
シャキーン!!!
卜傳流学んだから大丈夫!!
こ、この参加者も切られる!!
シャキーン!!!
卜傳流学んだから大丈夫!!
ちなみに後方からの攻撃は「鞘」で受け止めています。
※写真だと「背中切られてるじゃん!」と思ったかもしれませんよね。笑
ホント、学んでおいてよかったよかった!!
会場に戻り、最後は尺八の音で心を静め、ツアー終了。
この後みんなで昼食を食べながら今回の感想のヒヤリングをして、お昼過ぎに弘前駅で解散。おかげ様で参加者の満足度の高いツアーとなりました。
参加者はどのようにこのツアーを知ったのか?
チラシは印刷しませんでした。広告もなし。ほぼツイッターです。
今回のツアーは青森県と連携して実施。なぜ「青森県サイクル・ツーリズム推進協議会」が刀剣ツアーをPRしているのかという話は置いておくとして(笑)、ここから「刀剣女子」のみなさんに情報が拡散されていきました。
つまり、不特定多数ではなく「刀剣女子」「刀剣が好きな人」というコミュニティーに向けて情報発信したのです。
欲しい人のところに、その人が求めている情報を発信する。
当たり前だけど、結構やれていない。当たり前だけど、難しい。
例えばこのツアーのチラシを弘前市内のアパートに投げ込みしてもあまり意味がないのです。
同様に、「津軽ひろさき雪かき検定体験ツアー」のチラシを青森で一番読まれている東奥日報紙に折り込んでも、たぶんあまり意味がないのです。
だって、参加費払って雪かきする人は青森県にはいないからです。
このあたりがこれからの集客のポイントになる。
旅行業界に限らず、どんな商売でも共通点はあると思います。
一般的な観光とは別の「地域の魅力」とは?
タイトルにあるように、青森から刀剣を連想する人はあまりいないのではないでしょうか。
刀剣からイメージする、もっと有名な場所や人物、歴史はたくさんあります。
しかし、青森にも刀剣という文脈はあるのです。ただ、誰もそれに注目しなかっただけ。
地元の人には当たり前過ぎて気付かない事もあるし、又は、地元の人すら気付いていない事もあります。
ここに、これからの可能性が広がっています。地方創生、インバウンド、DMO、人口減少問題、交流人口促進、いろんな言葉を耳にしますが、僕はその根幹はこういう「地元人も気付いていない地域の魅力」の中にあると思います。
だからまずは「気付く」こと。
新しく何かを作るのではなく、あるものを活かし、点と点を結び、その地域ならではの物語を編んでいく。
そしてその物語を地域の人間が語る。
気付くだけでも、点を羅列するだけでもダメです。
青森はこれから絶対ブレイクします。日本が青森にざわざわします。
そうなるように、僕もがんばろう。
今日も「あるもの活かし」で行こう!
まずは気付くこと!!
#刀剣ツアー #弘前