弘前市が都内に移住相談窓口を設置!「場」を持つことの意味と価値!

先月有楽町に「ひろさき移住サポートセンター東京事務所」がオープンしました。「県」ではなく、人口約18万人の「市」が都内に移住専門の相談窓口を構えるのは珍しいことですよね。今日はそこから見える可能性と課題についてのお話です。

アクセスの良い立地


場所は有楽町駅の目の前。

img_5737 img_5738 中央口を出るとすぐ左に有名な宝くじ売り場があり、その向かいの「東京交通会館」の6階へ向かいます。

 

img_5736マルイの隣とも言えます。地下鉄有楽町線からは地下で直結していますよ。

 

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エレベーターで6階に上がるとそこに「ひろさき移住サポートセンター東京事務所」があります。北九州市と事務所スペースをシェアしているとのこと。

北九州市も移住相談が主要業務のようですが、観光など幅広く情報提供しています。北九州市の人口は約98万人で総合窓口。弘前は人口約18万で移住専門窓口。事務所名に「移住サポート」が入ってるあたり、弘前気合入ってますよね!

 

スタッフ3名体制で相談サポート


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東京事務所は3名体制。私が訪問したのは土曜日でしたが、1名は墨田区で開催されている弘前関連のイベントに行っているとのこと、所長の野呂さん(写真右)と、ノリの良い木村さん(写真左)が対応してくださいました。津軽塗のカウンターが目を惹きます。

 

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事務所内の相談スペースには「こぎん刺し」や「ブナコ」に「津軽塗」など、いたる所に弘前を感じることができます。

オープンしてから約1ヶ月で20名以上の相談があったそうです。私が訪問して滞在している1時間程の間にも、1組が相談に訪れていました。

最近は移住を考えている若い人も多いようです。弘前の移住情報が欲しい方は気軽に訪問してみてください!

ひろさき移住サポートセンター東京事務所
■開設時間 :平日午前9時~午後5時45 分(年末年始を除く)
※12月まで土曜日も開所し、事前の予約で午後8時まで対応可能です。
■場  所 :東京交通会館6階(千代田区有楽町/地下鉄有楽町駅直結)
■電  話:03-6256-0801 FAX:03-6256-0802
■Eメール:hif-tokyo@city.hirosaki.lg.jp

 

ここで疑問。同ビル8階には移住相談センターが


利便性の良い立地に弘前の移住相談窓口があるって、とてもいいなと思っていたのですが、実は同じビルの8階に全国の移住相談ブース「ふるさと回帰支援センター」が常設されているとのこと。

もちろんここには青森県のブーズもあり、弘前への移住相談をする事もできます(現在は弘前の相談があると、6階のひろさき移住サポートセンターを紹介してくれるそうです)。

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ではなぜ弘前市はわざわざ単独で、多分それなりの予算を使い、東京事務所を設置したのでしょう?北九州市と同じように観光等の相談も含めた「総合窓口」とすることもできたのに、なぜ移住だけに特化した相談窓口にしたのか?

私は「覚悟」だと感じました。全国的な事ですが、このままでは人口減少により消滅する市町村が出てくる。それを本気で何とかしようと打った手のひとつがこの「ひろさき移住サポートセンター東京事務所」の設置なんだと思います。

 

弘前市の移住に対する取り組み速度は鈍い?


私は弘前市の「移住促進実行委員会」の委員としてもお手伝いさせて頂いておりますが、今回の東京事務所設置とは裏腹に「弘前市の移住に対する取り組み速度は鈍い」、というのが個人的な肌感覚です。

それは多分「縦割り」「議会目線」「予算主義」だから。これはまあ、弘前市に限らず、自治体はどこも同じでどうしようもないのかもしれませんが。

<縦割り>
例えば都内在住の移住を検討している方々を対象に、まずは弘前を知ってもらおうと「食べてりんごの品種当てクイズ」とか「ミニねぷた作り体験」をやりながら、弘前の暮らしぶりの説明会を行う、とします。

ところがこれ、行政的には「そんなのダメ」となるケースがあるわけです。

「りんごクイズ・ミニねぷた作り」は弘前市の”プロモーション”で、移住と繋がらない、と言われたりする。これが縦割の悪いところ。

弘前市の例で言うと、弘前の良さを発信する課はたくさんあります。それぞれが移住に繋がる可能性がある。下記は一例です。ソースはこちら

・経営戦略部ひろさき未来戦略研究センター(行政改革・移住支援)
・経営戦略部広聴広報課(シティープロモーション)
・市民文化スポーツ部文化スポーツ振興課(芸能・文化・国際交流)
・農林部農業政策課(グリーンツーリズム)
・観光振興部観光政策課(観光の宣伝)
・観光振興部国際広域観光課(インバウンド対策)

それなのに「これはうちの課と関係ない」「観光と移住は違う」とかなる。

そんなの言ってる場合じゃないから、東京事務所作ったんじゃないの?

って思うわけです。何がフックになって移住に繋がるかわからないのにね。外国人だって移住する可能性あるわけで。

<議会目線>
「議会で突っ込まれないように」と言う意識は少なからずあると思います。そりゃあ自分の仕事にツッコミが入るよりは、無難に平穏に終わって欲しいと考える気持ちはわからなくもありません。

しかしそれは、作文力か基本目標設定が適切ではないだけかもしれません。今回の件で言うと、どのような数値目標設定をしているのでしょう?仮に「東京事務所を設置することにより、3年で移住者10名獲得」だとしたら、これは適切なのか?

そもそも、何を持って「10名移住した」と判断するのか。東京事務所に来ることなく移住する人もいるだろうし、きっかけが「ねぷた祭りが大好きだから」と言う観光が切り口になるかもしれない。

議会は突っ込むのが仕事です。突っ込みがあるから掘り下げて考えることができる。求められるのはきちんと対応できるスキルと現場力、調整力、そして根本の計画そのものです。

いずれにせよ行政担当者が「議会に突っ込まれないように」と考え出した瞬間、地域の未来は止まります。何が本質なのか?それは弘前市の明るい未来です。特に「移住」と言う新しい切り口において、明るい未来は面倒臭い事の積み重ねの先にしかないのです。議会や上司ではなく、市民と未来の顔を見据えてもらいたいものです。

<予算主義>
敬愛する山田圭一郎さんも先日講演でおっしゃってました。根本的に行政は「予算主義」です。いかに予算を獲得するか。それをクリアしたらホッとしてしまうところがある。本来ならそこからがスタートなのに。後は無難に予算執行すればいいや、的な方も多い。大学受験に少し似てますねw

似たような事を以前ブログに書いてます。
完成したら目標達成?マップやパンフレットは使われてなんぼ!

民間は間違いなく「決算主義」です。各部署に「経営」や「政策」「戦略」が多く見られる弘前市にはもっともっと意識して欲しいところです。

 

まずはやってみる。そして修正する


先日、「津軽錦石拾いツアー」を実施しました。寒い海岸で2時間、ただただ石を拾うツアーです。このツアーには高知・香川・京都・長野・東京などから11名が参加しました。中には「初めて青森来たけど、こんなに石拾えるなら住みたいわー」と言った方がいました(冗談かもしれませんがw)。

しかし、きっかけってこんなもんです。何がフックになるかなんて、誰もわからない。「子育ての環境が・・・」「雪国の生活は・・・」「弘前市内の就業先状況は・・・」ってのも大切ですが、そこがスタートである必要はない。

でも今の弘前市の移住取り組みはこんな感じ。面白みがない。思い切りもない。そして観光や農業、伝統工芸と言った様々な切り口(担当課)と連動できていない。

それなりの覚悟を持って東京に事務所出したんでしょうから、まずは色々やってみることが大切です。こぎん刺しや津軽三味線をフックに弘前に興味を持つ人の方が、もしかしたら移住する可能性高いかもしれません。毎週末何かしらのミニイベントを開催してもいいくらいです。

それをやる前から「その切り口は観光だ」「その切り口はシティプロモーションだ」「担当課が違う」「議会に説明がつかない」「本当に移住に繋がるのか」「どのくらい成果が出るんだ」とか、

そんなの言ってる場合じゃないから、東京事務所作ったんじゃないの?

って思う訳です。本当に。

弘前市にはいくつかアクセス数の良いサイトがあります。同じ自治体なんだからもっと連動すればいいのに、それすらもうまく行っていないのが本当に不思議です。

弘前市シティプロモーション
弘前ぐらし


あの手この手。どんどん色々やる。そしてきちんと「なぜ失敗したか。なぜ成功したか」を検証する。その上で新たな仮説を立てて検証し再チャレンジする。ありきたりな言葉で言えばPDCAサイクル。今の弘前の移住関連は、Pの段階でぐちゃぐちゃし過ぎ。

大好きな弘前。弘前ファンは増えているように感じます。もちろんファンが増えることと移住は別物ですが、ファンじゃない人が移住することも多分ない訳で。

インターネットの発達でいろんな情報が手のひらの上にあります。しかし、だからこそアナログな「人と人」と言うつながりが大切。有楽町という好立地に「いつでも相談できる場」がある事は、大きな意味と価値があります。もっと有効活用して、そのためにチャレンジをして、移住促進に繋がる事を心から願っています。

今日も「覚悟を決めて」行こう!

 

 

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投稿者: 西谷 雷佐

青森県弘前市出身。 東奥義塾高等学校を卒業後、ミネソタ州立大学マンケイト校で産業心理学とスピーチコミュニケーションを学ぶ。 たびすけ合同会社西谷代表を務める傍ら、路地裏探偵団の団員としても活動中。 まち歩きや地域の魅力発信から婚活まで講演活動多数。